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「ねえ、奏。」
響が、隣で眠る奏の方へ声をかけた。
「なあに。」
奏の声は思ったよりも早く返ってきた。
響はてっきり寝ていると思ったのだが。
奏もこの異変を感じているのだろうか。
「声…聞こえる?」
声、とは響の声のことではなく、外でする獣のような咆哮のことだった。
「うん。こんなに多いの久しぶりだよね。」
奏は体の向きを響の方へ向けた。
同じ顔の二人は、それこそ同じ様に眉をひそめた。
「でも、今日は違う。」
響の声を押さえた囁きに、奏も頷く。
その響の行動は、狙われた子羊の様に、危険を察知した時の自然な行為だった。
「うん。私も思った。」
二人の思っていたことは同じだった。
歌が、聞こえる…。
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