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ハヤトはハジと別れたあと、夜の薄暗い街をふらつきながら歩いていた。
思ったよりも殴られた箇所が痛む。
こんなに殴られたのは久しぶりだ。
「風がきもちいいな…」
ハヤトの茶色い長めの髪を風がなでつける。
それだけで、ハヤトの心は自然と軽くなる。
「…」
そういえば、ハジは怪我をしなかったのだろうか。
そこまで考えがいかなかった自分にムシャクシャしながらも、そんな素振りも見せないハジが悪いとハヤトは考え直した。
そこでハヤトは異変に気付いた。
「なんだ…風が」
ハヤトの声は、途中で途切れた。
突然上から巨体が、ハヤトの前に落ちてきたからだった。
その巨体からは、そこに現れた瞬間から異様な匂いを放った。
それは、ハヤトが喧嘩で流した血の匂いに良く似ていた。
「なっ…」
その見たことのない巨体の生物は、ハヤトの存在に気付くと顔だけハヤトを振り返った。
「「グオオオオオッッ!!!」」
ハヤトはその咆哮に、思わず顔を両手でかばった。
なんだあの化物は!
次の瞬間ハヤトは、元来た道を走り出した。
ハヤトは痛みも忘れて無我夢中で走った。
あの場所に居たら、あの一瞬見えた鉤爪で切り裂かれてしまう。
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