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ハヤトが心配するも束の間、化物は動こうとはせず、こちらを見ているだけだった。
ハヤトは化物が完全に見えなくなると、ある路地裏に駆け込み、膝をつき両手で体を支えた。
「なん…なんだっ…て」
ハヤトはなり止まぬ心臓を落ち着かせるように、声に出して確認した。
あれはなんだ?
ハヤトは確かにこの世のことなんて知らな過ぎる。
だがあんな化物を見たことがある人間は、いったいハヤト以外にどれくらいいるのだろうか。
「疲れた…」
ハヤトは建物に寄りかかるように座る。
思えば今日は災難続きな気がする。
勝てた喧嘩には負けて。
ハジに助けられて。
挙げ句にこれか?
「誰か教えてくれ。」
ハヤトは目を閉じた。
俺は何か悪いことをしたのか。
…いや、喧嘩なんてそんな悪いことじゃないだろ。
そんなことじゃなくてもっと本質的な…
「翼手のこと?」
いきなり声がしてハヤトは言葉通り飛び跳ねた。
「誰だ、お前!いつからそこに!」
ハヤトの目の前には、17歳くらいの少女がいた。
背は女子にしては高めで、ハヤトぐらいありそうだ。
春のまだ寒い夜に、膝下を見せたワンピースを着ていた。
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