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まず彼は、右手だけ翼手化している。
翼手化し、しかも人間の姿で翼手化を保っている。
つまり彼はシュヴァリエ。
しかし見たことのないシュヴァリエだった。
だが彼は自分の名を知っている。
「貴方は」
「誰ですか、なんて聞かないでおくれよ。」
ハジの言おうとしたことを言った彼は、いずれも笑顔は絶やさない。
しかし、眼鏡の向こうは全く笑っていない。
「久しぶりの再開だから、少しぐらいハメを外すのは許しますよ。でもハジ。」
再び彼は慣れ慣れしくハジの名を口にする。
「僕は本当に君に会えるのを楽しみにしていたんですよ。」
彼は今度は悪戯っぽく笑った。
「なんたって、血の繋がったたった一人の兄弟なんですからね。」
ハジは唖然とした。
たった一人の兄弟?そんなばかな。
ハジはそう思いながらも、恐る恐る口にした。
「…シュダ兄さん…?」
その名を口に出すのが久々で、合っているかもハジは分からなかった。
だが彼の喜ぶ顔を見て、ハジは幼い頃に引き離された15歳離れた兄、シュダを明確に思い出したのだ。
「思い出してくれたかい。でも残念。今はある人からもらった名を使っていてね。アルフと呼んでくれないか。」
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