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「やはり、君から小夜の居場所を聞くのは無理そうですね。」
アルフは右手を一振りし、刃に付いたハジの血を払う。
そして跪づいているハジに背を向けた。
「君は…。いや、いいです。」
アルフはハジに尋ねようとし、口を閉ざした。
「あなたに久々に会えて良かったですよ。私は間違っていなかったのだから。」
アルフのその意味深な言葉の理解ができず、ハジは眉を寄せた。
「それから次に会うときは、もっと本気で来なさい。」
「気づいてたのですね。」
アルフはハジが本気で戦えないことを知っていた。
彼はそういう子だ。
「でないと、宝物を失ってしまいますよ?」
アルフはハジを振り向き微笑むと、勢い良くその場で飛脚した。
彼の革製の服が、灰色から瞬く間に黒く染められた。
ハジはアルフを追おうとする。
その途端、翼手の咆哮が聞こえた。
あれは餌を目の前にしたときの咆哮だ。
ハジは瞬時に理解すると、傷が治りきる前に、足に力を込める。
二・三回飛んだ所で、ハヤトを見た。
「翼手。」
次いでハジは翼手を見つけると、躊躇らわずその場所に向け飛び込んだ。
ハヤトは既に駆け出していて、ハジにとって都合が良かった。
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