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夜の海は、穏やかな波で受け返しをしてしぶきを上げる。
そのしぶきを妨げるように、巨大な船はそこにあった。
日付が変わる時間帯を気にせず、その船の小窓からは、明かりが絶え間なく燈っている。
その一室で、疲れた目を擦りながら椅子にもたれていたデヴィッドは、不意に叩かれるドアの音に、姿勢を正した。
「邪魔するぞー。」
ルルゥだった。
彼女は今、この『赤い盾』に訪れている。
といっても、彼女はいつからここに居るのか分からない。
小夜が居る沖縄に見かけたと思ったら、ルイスとしゃべっている所を見かけたものもいる。
最初は戸惑った皆だが、最近は彼女の神出鬼没には慣れがでてきた。
「どうした。こんな夜更けに。」
昔は銃を交える相手だったのに、今や二人のその口調には敵という重い雰囲気は全くなかった。
「特にはないんだけど…人間って本当に大変なんだなあ。」
ルルゥはデヴィッドの近くまで来ると、その書類は整えてあるものの、机の上の大量の資料を見て心から思っていた。
「時にはこういう人間も必要なんだ。」
始祖翼手、つまり小夜とディーヴァの戦いが終わったのにも関わらず、翼手事件は未だに各地で起こっていた。
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