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ジュリアの研究で対翼手薬が出来たのには、素晴らしい進歩だと思っている。
しかし翼手になる可能性の人間を全て見つけ出すのには、赤い盾でも相当な時間がかかる。
それらの状況が書かれたこの資料に目を通しておくのも、デヴィッドの名を受け継いだ者の仕事だ。
「ふーん…あっそうだ!」
ルルゥがその大きな瞳を輝かせた。
「あたいにも対翼手の武器をおくれよ。そうしたらあたいが翼手を全部片付けてやるからさあ。」
ルルゥは最後に胸をはった。
デヴィッドはルルゥのその申し出に、少なからず喜んだ。
なぜなら彼女はシフで、翼手と対等、いやそれ以上で渡り合えるからだ。
しかしデヴィッドは、本当に彼女に武器を与えていいのか迷った。
彼女たちシフの恐るべき、血の呪いとも言えるソーン。
あれを消すことができたときの彼女の喜びと、同時のあの切ない表情が忘れられないからだ。
彼女はこのまま幸せな世界に身を置くべきだと、デヴィッドは思う。
昔の自分では、きっと即座に彼女の力を借りたのだろう。
それほどにあの戦いの中で、自分は変わったのだろうか。
「お前は、このままでいい。」
それだけデヴィッドは言う。
「なんでだよ!」
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