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「カイ。私は本当にハヤトに会って良かったのですか?」
ハジの質問にカイは、愚問だとでも言うような表情をした。
「ハジ、いいか。あいつは俺達の家族なんだ。家族の間に秘密なんてあっちゃいけねぇんだよ。」
カイは小皿の上に半分に切ってあるゆで卵を取ると、奏に渡した。
「大体、俺があいつを引き取ったときにもう予想はついてただろ。」
「はあ。」
小皿の上に同じものをのせると、今度は響に渡した。
「だからいいんだよ。あいつはあいつで、ゆっくり理解してけばいいんだ。」
カイは、ジョージを思わせる。
カイがいる限り、奏と響、もちろんハヤトも、普通の人間として生きていける気がしてならない。
けれどこの家族は、いずれは小夜と自分のような別れが来るのだ。
ハジならば目覚めるまで待っていられる。
しかし人間のカイは、二度と二人の娘の顔を見ることができないかもしれない。
ハジが考えに更けっていると、誰かが石段を登ってくる音がした。
その音の主は、ハジも良く見知った人物だった。
「ジャック!」
カイが驚きの声を上げた。
ジャックと呼ばれたアメリカ人の少年は、礼儀正しく一礼すると、慣れた日本語で話し始めた。
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