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しかしその雰囲気や柔らかい物腰からは、デヴィッドに常に備わっていた鋭さを一つも感じない。
それも全て、翼手の劇的な減少により、『赤い盾』の存在が年々薄れているからだろうか。
しかしジャックは、それでも『赤い盾』に入りたいと申し出たのだ。
彼は全てを知りたいと願った。
人々の知らない翼手の存在。そして何より小夜という少女の存在を。
カイから聞いた話しによると、ジャックはジュリアからも医師の勉強も教わっているようだ。
「ぜひ、そうしてくれ。」
カイが、心から嬉しそうに笑った。
「帰る。」
そんな二人の会話を聞いていたハヤトは、突然立ち上がり踵を返す。
「ハヤト、帰っちゃうの?」
奏が悲しそうにハヤトを除き込む。
ハヤトは一瞬そちらを見たものの、すぐに地面に視線を落とした。
「少しぐらいいいじゃないか。ほら、座れよ。」
カイが座れとハヤトを促す。
しかしハヤトは座ろうとはしない。
そんなハヤトを見ていたハジは、ハヤトが拳を握り締めているのに気付いた。
「…俺は、小夜とかいう人と全く関係ねえし。」
「…ハヤト」
そう言い残すと、ハヤトはカイの静止も聞かず走り出した。
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