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ここまで長い旅路だった。
昨夜から夜通し歩き続けている。
男は旅に慣れているようだが、幼い子供二人には過酷な旅だ。
この道は街道として整備されてはいるものの魔獣や野生の獣が頻出する。
通常このような道は護衛を雇い馬車を使って集団で移動するものだ。
にも関わらず男は自身の身一つと剣一本で子供二人を守りながら旅を続けている。
今は馬車を待つよりも先を急がなければならなかった。
目的の街まで後わずか、近くに休めそうな場所はない。
いつまた襲われるとも分からない。
しかし、子供の歩幅は小さく、雨に濡れたローブは重りとなって残り少ない体力を奪ってゆく。
「キャッ!!」
男の後ろから小さな悲鳴と水溜まりを荒らす音が聞こえた。
子供の一人が石に躓き転んでしまったのだ。
「……大丈夫?」
転んだのは少女だった。
隣を歩いていた少年が歩み寄り手を差し出す。
「…………ありがと……」
疲れて上手く声が出せないが少女は礼とともに差し出された手を握りゆっくりと立ち上がった。
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