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男も少女に歩み寄り少女が立ち上がるのを見届けた。
「……怪我はないか?」
男が尋ねると少女は男の顔を見上げ小さく頷く。
しかしその顔は疲れきっており、また雨に体温を奪われ顔色も青ざめている。
少女は明らかに無理をしていた。
(……やはり限界か)
男はなんとか休める場所がないか辺りを見回す。
しかし、霧で視界が悪く休めそうな場所などとても見つからなかった。
もうすぐ日も暮れる。
もしこのままここに立ち止まって休んでいたら、飢えた野獣達が集まって来てしまう。
そうなれば、自分だけならともかく、疲れきった子供達を守りながら戦うことは難しい。
男も旅慣れているとは言え、疲れが溜まっている。
今の状態では子供達を守り通す自信がなかった。
(…………!!あれは!!)
しかし、そんな霧の中から男は光明を見いだした。
男は二人に向き直ると励ましの言葉を掛ける。
「頑張れ!もう少しだ!」
少女と少年は互いの手を握りしめたまま男の指し示す先をともに見据える。
すると、長い街道の先、霧に隠れて朧気だが、白い闇の中にうっすらと光が灯っているのが見えた。
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