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『くそっ…!すぐそこに、目の前にマリーがいるのにっ!!』
助けにきた刹那にもらった端末機を頼りに、アリオスの指定ポイントに来ると、僕を追ってきたのだろう、マリーと遭遇した。
マリーに銃を向けられても、僕は…僕はマリーに思い出して欲しかった。
僕との過去を、思い出を、本当の自分自身を。
本当の君はそうじゃない。
銃なんか似合わないんだ。
君はここに居ちゃいけない。
だから精一杯伝えたんだ。
だけど…後から来た追っ手に邪魔をされてしまった。
『刹那!!!アレルヤ!!!もう限界時間だ!!!』
ふいに、右手に持った端末機から凛、とした声が聞こえた。
(…っ!!?ティエリア!!!)
間違いない、間違えるはずがない、ティエリアの声だった。
ずっと聞きたいと思っていたあの子の声だった。
(…くっ…しかしっ…!!!)
目の前にはずっと捜してしたあの子が、マリーがいる。
こんなに近く、手の届く距離にいるのに、彼女を置いていく?
(そんなっ…そんな事は…しかしっ…)
緊迫した状況、ここで僕が決断しなければ、まず間違いなくソレスタルビーイングの戦況は刻一刻と悪化するだろう。
僕を救う為に今もなお戦っているあの子の戦況もまた、悪化させてしまう。
苦しめてしまう。
逡巡する思考、交錯する思い
どちらを取るべきか
でも、その迷いを断ち切ってくれたのは、やっぱり君だった。
『アレルヤ!?どうした!?アレルヤ!!アレルヤ!!』
端末機の青白い液晶画面から必死に聞こえる、君の僕を呼ぶ声。
そんなに必死に、僕の名を呼ぶ君の声を、僕はそれまで聞いた事がなかったよ。
視線を左に泳がせばマリーがいる
そして右に泳がせば、白と橙を基調とした、キュリオスを思わせる、僕のガンダム、アリオスがある。
瞳を強め、覚悟を決めた。
端末機を唇に寄せ、どうか君にこの声が強く届くように
『…了解!!!』
君の切なる声に僕の迷いは吹き飛んだんだ。
青白く光る液晶画面の向こう、君が小さく息を飲んだ気がした。
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