第42話:子守

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常々不思議だとは思っていたが、素直に認められない自分がいて。心のどこかでは『こんなの、気のせいだ、そうに決まってる』って思ってた。その姿を目の当たりにするまでは―― 寝室から泣き声が聞こえる。さっきミルクをあげたから、次はオムツに違いない。 俺は最近やっと掴めてきた子育てに夢中になっていた。最初は『怖い』って思ってた。だって、赤ちゃんは一人じゃ生きられないし、弱い存在。もし俺が取り返しのつかないことをしたらと心配だったから。だけど、案外赤ちゃんも図太く生きてることが分かって、安心したんだ。 「ねぇ、Dのオムツ替えてきてー」 「おう、任せとけ!」 キッチンで洗い物している奥さん、Mに見えるように大きくガッツポーズをしながら、今年ようやく一歳を迎えた息子の元へ向かった。『今すぐお父さんが不快な思いから救ってやるぞ!』なんて意気込みながら。 でも……。 「ん?」 俺が寝室に入る途中で、泣き声がぴたりと止んだ。
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