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「家に帰ったらね、男の子がいたのよ。『そこで何してるの?』って聞いても何も言わなくて、私の手をとって走りだしたの。そうしたらね、すごく不思議なんだけど、男の子が考えてることが伝わってきたのよ。『Dが危ない』『Dを助けて』って」
頷くことしかできない俺は、ただただMの話を聞いていた。
「途中で男の子が消えたと思ったら、進行方向に立っててね、『こっちだよ』って言ってるみたいに、曲がり角ごとに腕を上げて教えてくれてたの。……で、着いたらここだったっていうわけ。こんなこと、信じられる?」
体験したM自身も半信半疑なのが分かるほど、彼女の顔には微妙な表情が浮かんでいた。
Dはすぐに熱が下がり、また笑顔を見せてくれるようになった。
あの日に現れた少年の正体は分からないが、決して悪い霊だったとは思えない。ミルクを俺の代わりにあげてくれたり、オムツを替えてくれたのもきっと彼だっただろう。
その後もちょこちょこ出てきた彼だったが、年が変わったのをキッカケにして、現れなくなってしまった。
あの時のお礼がまだ言えてないので、次にもしも会うことがあれば言いたいとMと話している。
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