第43話:筆箱の中には

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「ふあ~あぁぁぁぁぁ」 重い瞼を擦りつつ、俺は布団から身体を文字通り“引きはがした”。真夏でべたつく肌に、シーツがくっつく。かなり気持ち悪い。 時計を見ると、針は朝の6時をさしていた。ラジオ体操なんて毎日通っていられるか。俺は忙しいんだ。 「Sー!今日こそはちゃんと宿題やりなさいよ!」 「やーだねっ!」 俺は朝食を済ますや否や、スケッチブックと絵の具、その他もろもろを掴むなり、颯爽と家を飛び出した。 「後で泣きついても知らないわよー!」 母さんの怒鳴り声が聞こえてきたが、構いやしない。夏休みは大人になるまで毎年やってくる。けれど、小学校4年の夏休みは二度と来ないんだ。絶対に悔いは残したくない。俺はやりたいことをおもいっきりやるんだ! 熱を吸収したハンドルに苦戦しながらも自転車に跨がると、灼熱の太陽で温められた空気が身体に纏わり付いた。Tシャツを通して伝わる熱が、身体の水分を奪っていく。 「あちー!」 夏に包まれた俺は、ひたすら池を目指し、ペダルを漕いだ。
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