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日が沈みはじめ、辺りが薄暗くなった頃。
クラッドは焦っていた。
「だいぶ遅くなっちゃったなぁ。
早く帰らないと」
すでに足下が見えない程暗く、何度も転びそうになりながらも、森の出口へ向かって駆け抜ける。
やがてクラッドが森から出ると、村の様子がおかしいことに気付いた。
「……あれはっ!」
遠目に見えた村からは微かに人の悲鳴らしき声が聴こえ、煙が立ち上っている。
「父さん……!母さん……!」
クラッドは考えるより先に走り出した。
歩きなれた家への道を駆け抜け、だんだんと村が近付いてくる。
――大丈夫だ……。父さんと母さんは大丈夫。
クラッドが必死に自分に言い聞かせていると、村の入り口に到着した。
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