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クラッドは絶望した。
さっきまでいつも通り見送ってくれた母が……。
――暗くなるまでには帰ってくるのよ~。
出かける時の母の口癖だった。
もうそれが聞けないことと、母の死に涙が頬を伝う。
――父さんを助けないと……。
だが、まだ生きている父を助ける為に、ゴシゴシと涙を拭き家を出た。
フラフラとおぼつかない足取りで父の所に向かうと、父親はわかっていたかのように話し出した。
「いいか、クラッド。よく聞くんだ」
「……グスッ……」
クラッドは察してしまった。
父親もまた、長くはないことを……。
堪えたはずの涙が再び頬を伝い、地面に染みをつくる。
「強く生きろ。どんなに……ボロボロになっても」
「父さん……」
「自分が決めたことは……何があっても……守るんだぞ」
「うん……うん……」
「お前にもいつか……大事な人が……できるはずだ。その時この約束は……忘れるんじゃないぞ?」
「誓うよ父さん。……その約束は絶対に忘れない」
「あぁ……男と男の約束だ……。強くなれよ……誰よりも……。
母さんといつまでも……見守ってるからな……」
父親の瞼がゆっくりと閉じられていく。
「……父さん?父さん!ああぁぁぁぁぁぁっ!」
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