愛しい存在 *跡部景吾*

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「……怜奈…。」 小さく愛しい人物の名を呼べば、俺の膝の上に座っていたそいつが振り向いた。 にっこりと俺の方を見て微笑んで。 「どうしたの?跡部君。」 「…いや…。名前を呼んだだけだ。」 「変な跡部君。」 クスクスと俺を見て笑う怜奈。 そんなしぐさが愛しくてたまらない。 俺はそんな怜奈を見ているうちにキスしたくなったから、怜奈に肩越しに口づけた。 「…んっ……。」 俺が怜奈の口内に舌を侵入させれば、怜奈が甘い声を漏らして。 その声を俺が出させているんだと思うと酷く興奮した。 「…跡部くん……。」 は、と息を吐いて怜奈は俺の服を掴む。 それが可愛かったので、俺はフッと笑むと怜奈の唇をツ…と撫でた。 「…お前、誘ってんのか?」 「……ふぇ?」 俺がそう問えば、怜奈はキョトンとして首を傾げて俺を見つめた。 故意的なのか、そうでないのか……怜奈は確実に後者に当て嵌まるだろう。 だからこそ、愛しく思える。 しかし、厄介でもあるのだ。 無意識だからこそ、襲うわけにはいかない。 ……まぁたまに我慢できなくて襲ってしまうが。 好きだからこそ、大切にしたい。 傷つけたくない。 「……跡部君……?」 「っ、わりぃ、なんだ?」 我に返れば、不思議そうに怜奈が俺を見つめていた。 「…ね、もう一回……キス…して…?」 怜奈が恥ずかしそうに言うのを見て、俺はまた怜奈に魅了されて。 俺様の心をこんなに掻き乱すのは、今までもこれからもこいつだけだろうな……。 そう思った。 〓End〓
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