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好きな事に熱中すると、時間が早い。俺がやっとの事で和漢三才図絵を見終わると、とっぷりと、日が暮れていた。
「秋の夕暮れは早い。…………そう言えばあの食欲魔神は何処に行った?」
俺は本を元にあった場所に戻し、私設図書室から出て、辺りの様子を伺った。
………エレベーターは動いていない(このフロアー専用なんだと。しかも、入り口と同じく、指紋・網膜・パスワードで動くタイプ。金持ちめっ。)突き当たりの部屋から灯りが見える。奴はあそこか?
俺は黙って帰るのも何なんで、奴のアジトに乗り込む事にした。
「おい。入るからな。」
「どうぞ。」
俺は中に入り、動きが止まる。
………何だ?この部屋。
先ほどの部屋なんかよりも数倍でかい。窓から夜景なんか見えて景色も良い。だが問題は中身だ。広い広い部屋には奴が寝そべるソファー。そして大型のテレビ。後は床に転がる、数冊の書物と窓のカーテン。それしか無かった。
「……どうした?」
どうした?そりゃあ、こっちのセリフだ。
「寂しい部屋だな。生活観、まるでゼロ。普通暮らしている奴の色とか出ないか?」
「…………色?別に無くても困らないだろう?お前は面白いな。」
奴は立ち上がると、俺の前に立ちはだかる。
「さて。満足したか?お礼に何をしてもらおうか。」
奴は俺の眼鏡を外して、顔を近付けてきた。
「そうだな。俺の身体で返してやるよ。」
俺の言葉に、奴はちょっと動揺したようだ。
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