竹春 桔梗と言う存在

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   「どうだ!食欲魔神っ!」     俺はドン!と奴の目の前に大盛りの炒飯を置いた。身体で返す事にした俺は、奴に夕飯を作る事にした。しかしまあ、良く食べる。満腹中枢が壊れてるんじゃないのか?この男。     「…………汁物も飲みたい。」     奴は大根とイカの煮物を頬張りながら言った。組み合わせはおかしいが、奴のリクエストだから仕方があるまい。  しかし不思議だ。これだけ何も無い家なのに、食材と調理器具は食べ物屋並みに完備されている。俺は冷蔵庫の中を見て、砂抜きがされてあった、あさりの味噌汁を作りながら、その理由を聞いてみた。     「ああ。食材は、涼の奴が3日に一回ぐらいの割合で送り込んで来るし、奴がその時に作り置きをしていくからな。食べる物が無くなったら適当にデリバリーか、食べに出る。」     理事長がねえ……。あの冷血男がコイツには甘いのか。どういう関係だ?     「…俺には関係無いか。」     「何がだ?」     「…………もう食べたのかよ。」     炒飯が乗った筈の大皿を手にした奴は、何時の間にか俺の背後に立っていた。    「………もう遅い時間なんだから、あんまり食べ過ぎるなよ。今日は味噌汁で終わり。今、冷蔵庫でティラミス作ってるから、それで諦めろ。」     何か言われるかな?と思ったが、奴は頷くと大人しくテーブルへと戻って行った。因みに、食卓はキッチンの隣にあったが、やはりそこにも、食卓しか無かった。     「…………なあ。お前、これだけ何も無い家で寂しくないのか?」     「寂しい?…………いや。これがあちらでも、普通だったからな。師匠とかその辺りが来ない場合は、大抵一人で過ごしていた。……その方が気楽だったからな。」     無表情、無感情に笑う奴を見て、何だか俺の方が寂しくなってきた。   
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