26歳で死んだ男

15/20
前へ
/64ページ
次へ
「ピート!ピート、おいしっかりしろ、こっちを見るんだ、ピート!こんなの何でもない、ちょっと当たっただけだ。だろ? まだまだいけるだろ?そうか、わかった、反撃はしない、逃げよう、大丈夫さ、幹部だって分かってくれる、逃げたんじゃねぇ、仕方なかったんだって、なに?なんだ?!もっかい言ってくれ!」 ピートが自分のズボンのポケットのあたりを指す。 銃の音はもうしてない。 もしかしたら、幹部たちの弾があたって、今頃あいつお陀仏かもだぜ? テーブルの向こう側は見えない。 「なんだ?財布か?これだな?」 財布をピートに渡すと震える手で中から写真を取り出す。 「クィーン」と「小さなプリンス」だ。 手を顔の方へ持って行こうとするが、震える手はもう一定の角度以上に曲がらない。 それでピートは首の方を手に近づけようとするが、それももう力が足りないのか写真とピートの距離は縮まらない。 ピートが口を突き出す。本当に まぬけでダサくて、最悪に滑稽な顔だ。 なぁ、最後だからどうでもいいみたいな顔すんなよ。 俺は無理矢理ピートの腕を押しやった。鈍い音がした。 写真に唇が触れる。 血だらけのピートが少し笑う。 満足したピートから力が抜けてドサっと倒れる。 そのとたん、雨が降り出した。 .
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

308人が本棚に入れています
本棚に追加