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「ピート!ピート、おいしっかりしろ、こっちを見るんだ、ピート!こんなの何でもない、ちょっと当たっただけだ。だろ?
まだまだいけるだろ?そうか、わかった、反撃はしない、逃げよう、大丈夫さ、幹部だって分かってくれる、逃げたんじゃねぇ、仕方なかったんだって、なに?なんだ?!もっかい言ってくれ!」
ピートが自分のズボンのポケットのあたりを指す。
銃の音はもうしてない。
もしかしたら、幹部たちの弾があたって、今頃あいつお陀仏かもだぜ?
テーブルの向こう側は見えない。
「なんだ?財布か?これだな?」
財布をピートに渡すと震える手で中から写真を取り出す。
「クィーン」と「小さなプリンス」だ。
手を顔の方へ持って行こうとするが、震える手はもう一定の角度以上に曲がらない。
それでピートは首の方を手に近づけようとするが、それももう力が足りないのか写真とピートの距離は縮まらない。
ピートが口を突き出す。本当に
まぬけでダサくて、最悪に滑稽な顔だ。
なぁ、最後だからどうでもいいみたいな顔すんなよ。
俺は無理矢理ピートの腕を押しやった。鈍い音がした。
写真に唇が触れる。
血だらけのピートが少し笑う。
満足したピートから力が抜けてドサっと倒れる。
そのとたん、雨が降り出した。
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