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血が入ってきて開けるのこともままならない俺の目に映るヒーロー。
手にはマッチ箱。
くそっ、俺のじゃねぇか。さっき玄関に捨てたやつだ。
こんなことならケチんないでジッポ買っときゃよかった。そんなことどうでもいいか。
全部のマッチ棒を使って小さな火の塊ができる。
ヒーローの体が縄ばしごによって宙に舞う。
ヒーローは俺たちを上から見下ろす。
勝利のほほえみ。
白い歯が嫌味なほど似合う。
そして、火の塊をもっていた手をぱっと離す。
落ちてくる。
落ちてくる。
落ちてくる。
地面に届く。
目の前が真っ赤になった瞬間、
轟音が響いて、体がちぎれるのを一瞬だけ感じたような気がする。
一瞬、そんな気がした。
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