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『逃げまどう麻薬の密売組織を捕まえたのは、先月の大がかりなおとり捜査で一躍我々のヒーローとなった捜査官でした。
こちらのフリップをご覧ください。
大通りをこのように下ってくる組織の車を、こちらの細い路地から近道をして、挟み撃ちにしたんですね。
地元を知り尽くした捜査官でなければ、この機転は利かなかった出しょうね。
いえ、この捜査官でなければ、迅速な判断は出来なかったはずです。本当に優秀な……』
英雄的警察官の行為が褒め称えられるニュースを私はベットで見ていた。
ヒーローの写真が画面いっぱいに映される。
白い歯が似合うブルーの瞳が画面越しに私を見つめる。
どこかで見たことがあるような
、よくあるような、けれど現実にはなかなかお目にかかれない、
雑誌の表紙を飾るために生まれてきた笑顔。まぶしい。
ベットのそばには果物のかご。警察の人がお見舞いとしてもって来てくれた。
怪我の治療費や入院費は署が負担してくれることになった。
入院している間の生活費も出してくれるという。
その代わり私の怪我は『軽傷』として報道された。
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