第一章

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彼女には男がいた。 それを偶然にも知ってしまって、私は夜毎(よごと)苦しんだ。 私は気付かずとも女性に恋をしてしまったらしい。 しかも悪いことに私がそれを知ったとき、 同時に彼女はその男に既に抱かれる予定があることまで知ってしまったのだ。 夏休みのまっただなか。私たちコーラス部以外は誰も通わないじっとりと湿気をこもらせる教室。 昨日も今日も、きっと明日もここで私の密かな禁じられた恋を置いて全国大会に向けての練習が進む。
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