第一章

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ところで彼女は私より一歳ばかり年上だった。 でも、たかが一歳年上にせよ、 部活の規則が学年を隔てて気軽に話すことを禁じる空気を作り出していた。 このコーラス部は全国に名が通るだけあり、 常に大人数で動くため、規則はは半端なく厳しい。 だから他学年との壁は厚い。 しょっちゅう誤解が生じあい、時に喧嘩に陥ることもある。 私の学年と彼女の学年も例外ではなく、 ちょうど去年の今頃は激しく対立していた。 思えばあの時は恋の兆しさえもなく 私にとって彼女は只の恐い、厳しい先輩であったし、 彼女にとっても私はナマイキな後輩のうちのひとりであったんだろう。
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