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雨上がり。
陽射しが雲の隙間から覗き、美しい光を放つ。
その光は、今のこの男にはどうでもよく見えた。
木並木 真散(きなみき まちる)は汚れた学ランを腕に抱えて帰っていた。
今日もまた馬鹿にされた。
いじめられた。
イライラと、悔しさで下を向きながら歩く。
ふと水たまりに顔が写った。
「…くそっ!!」
バチャッと写った自分の顔を踏みつけた。
「なんで…こんな顔なんだょ」
波が戻り、改めて写った顔。
髪を短く切り、全てとは言えない。
しかし、見れば誰もが間違えてしまいそうな…
『美』が付く様な小顔。
しかし『美少年』とは言い難い。
この場合ふさわしいのは『美少女』。
「はぁ…」
水たまりを避けてまた歩きだした。
これ以上水たまりが無いことを、ただ願った。
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