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「どうした、その程度か?」
辛うじて剣撃を防いだ少女ではあったが、その表情には答える余力すら残ってはいなかった。
しかし、少女は自らの力を絞り出すようにして女の太刀をいなして脇差しを抜いた。
「ほぉ、苦し紛れの二刀か。まだまだ尻の蒼い娘よ」
「はぁ…はぁ…」
「よかろう。では、私も遠慮せずに応えよう…」
そういって女は野太刀を右肩に担いだ。
「担ぎ…上段の構え…」
「兄者、これより手出しは無用ぞ」
「へいへい。それじゃあ成り行きを見守らせてもらうか」
すでな戦意を失っている青年はその提案に対し拒むことはせず、その場に腰を下ろした。
「これで邪魔者はいなくなった。さぁ、全力で撃ってみせよ」
女は見下すような視線を少女に向けて口元を緩めた。
それを見て少女は構えていた刀を鞘に収めた。
「甘く…見るなーッ!」
少女は咆哮し刀を構えず駆け出した。
「…抜刀術か。小細工はなしということじゃな」
少女の動きに合わせるように女は構えていた太刀を全力で振り下ろした。
次の瞬間、風の音がする草原には再び甲高い金属音が辺りに響いた。
そして、少女が抜いた刀は女が放った一閃を受けたものの完全に刃先を真っ二つにしていた。
「…終わりじゃ」
「あッ…あッ…」
刀を折られ強烈な剣撃は少女の利き腕の感覚をも奪った。
「しばらくその腕は使えまい。そして、残った脇差しではこの太刀は受けきれぬぞ」
「嫌だ…。私は…まだ…まだ…負けるもんかーッ!」
再び腹の底から咆哮した少女だったが、女が放った無慈悲な一閃が少女の左脇腹を襲った。
「…!?」
一瞬の痛覚を覚えたものの声にはならず、少女はその場に倒れた。
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