幕間‐見えない‐

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  困惑した。 頭の中がぐちゃぐちゃになった。 物には触れれる。 でも、 声が届かない。 自分を見てもらえない。 しかし、悲劇はこれだけでは無かった。 重い足取りで学校に向かった。 当然、挨拶などない。 “挨拶”が無性に恋しかった。 自分を見て「おはよう」と、笑顔で言って欲しかった。 教室について、自分の席に座る。 黒板から見て、一番右端の後ろだ。 優美はこの席が嫌いだった。 なんだか、ポツン、としているからだ。 教師が入ってきて、出席を取る。 自分の名前が呼ばれるのを待つ。 どうやって出席を伝えようか。 「加賀谷」 「はい」 「加藤」 「はーい」 次だ。 「小林」 ――え? 頭が真っ白になった。 名前が、当然のように抜かされたのだ。 考えればおかしい。 「今日は優美ちゃん休みかな?」 そういった友達の声が、全く無かった。 まるで優美の記憶だけが、切り取られているかのように――…。 「そんな……」 泣けなかった。 悲しみより、絶望が頭を支配していた。 今までの平凡な毎日、それでも幸せだった毎日が、まるで夢のように消えた。 幸い、食事を探すのに苦労は無かった。 店やコンビニから、普通に取れたのだ。 罪悪感は感じなかった。 こうしなきゃ餓死するのだから。 もう、涙は枯れ果てた。 絶望が悲しみに変わったのは、孤独が身に染みてからだった。 たくさん泣いた。 泣きすぎた。 でも――届かなかった。 そんな無機質な毎日を送っていた時、二人は出会った。  ◇
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