幕間‐見えない‐

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  「という訳で……あ、あれ?」 「……ぅ……ひぐ……寂しいよな……」 その話を聞いて、俺は涙を止めることができなかった。 俺が突然泣き出したため、優美はあたふたとしているが、お構い無しだ。 「よし決めた!」 「は、はいっ?」 「今日からしばらく、この家にいなよ」 なるべく柔らかく微笑む。少女を少しでも安心させるために。 「へ? どうしてですか?」 「だって寂しいだろ?」 「でも……」 「それに俺にしか見えないなら、手伝えるのは俺だけだろ?」 そう、少女の問題を解決できるのは俺だけだ。他人には見えないのだから。 透明、まさにファンタジー。 ミステリーではない、非現実。 でも何か理由があるんだ。 「まぁ俺と同じ部屋になるけど……母さんの部屋使っても良いしさ」 「え?」 「今、両親は海外で働いてるんだ」 とは言え、やはり抵抗があるだろうか。 決して妹が欲しい訳ではない。 いいか? 決して妹が欲しい訳ではない。 うん、断じて。 「あ、ちょっと待ってて!」 「あ、ええっ……」 先ほどから少女は狼狽えているが、お構い無しだ。 俺は荒々しく部屋を出ていくと、台所のあるリビングへ向かった。
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