開幕‐それは運命のように‐

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  冬の寒さが役目を終えて、暖かな春がようやく訪れた。 ぽかぽかとした陽気に包まれながら、俺は桜並木を歩いている。 青い空。時折視界を横切る桜の花びら。 今年の冬は暖かったせいか、桜の満開は例年より早い。 「ん?」 桜並木を通り過ぎた先にある公園の広場。 水路沿いにはベンチが備え付けられていて、そこに俺はいつも座っていた。 しかし、俺は足を止めた。 どうやら今日は先客が居るようだ。 絹のように艶やかな漆黒の長髪に、全身を形作る柔らかな曲線。 白磁の如き白い肌を舞台にくりくりとした瞳があり、幼さの中にも整った顔立ちが見える。 どうやら少女は、ベンチの前にて繰り広げられる、子供達の『ごっこ遊び』を見ているようだ。 「ま、隣にお邪魔させて貰うか」 俺は再び足を動かして、少女の隣に腰を下ろす。 少女は俺に振り向きもせずに、目の前の子供達を見つめていた。
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