開幕‐それは運命のように‐

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  当然のように、隣に座る少女は顔を曇らせてうつ向いてしまった。 「気にしない方が良いですよ。相手は子供ですし」 隣の少女を慰めるように優しく言った。 しかし少女はこちらを見ると、首を振って辺りを見回し始める。 近くには先ほどの男女と俺しかいない。 しばらく辺りを見回した後、少女は再び目の前の子供に視線を戻した。 「スルーかよ……」 無視されたことでの悲しみと、自分の存在をアピールするように呟いてみた。 すると、彼女は目を見開いて俺を見てきたではないか。 何かついてるのか? 「……え……んで……」 「え?」 少女が何かを言っているようだが、声が小さい。 見れば肩を震わせているし、瞳が微かに潤んでいる。 「私が……私が見えるんですか?!」 「……ん、え? そりゃ勿論……」 見える? どういうことだ。 困惑して首を傾げる俺に、少女は徐々にこちらへ近づいてきた。  
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