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「そして悪魔が現れたんだ」
「精神科いくか?」
お互いに笑い合う。
しかし、俺の頭は混乱していた。
小説にも出てきた悪魔と同じなのか。
「悪魔はこう言うんだ」
◇
暗い。
月の光も弱々しく、空は異様なほどの静寂さを保っている。
ああ、俺の心の中のようだ。
ほら、雨が降ってきた。
雲ひとつ無いのに不思議だ。
「こんにちは」
声のした方を振り向くと、黒い仮面を付けている“何か”が立っていた。
見た目なら人間だが、脳が人間とは認識していないようだ。
「はじめまして」
「ああ、ご丁寧に。どうやら良くない事があったようですね?」
仮面は口元から上を隠しているため、弧を描く唇だけは隠されていなかった。
笑っているのだろうか。
「よくわかりましたね」
「はい、私は貴方の願いを叶えに来たのですから」
「不思議なことを言うな。願い、か。もう無くなった、と言っても良いかもしれない」
俺は自嘲気味に微笑む。
すると目の前の何かが、両手を広げた。
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