‐時‐

12/15

4781人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
  帰宅した俺は、優美が居ないことに気付いた。 まさかまだ寝ているのか、と思い自室に戻る。 部屋のドアを開けると優美はいた。 しかし、 「……何してんですか……」 「掃除だよ?」 本棚を整理している優美は、おかえり、と付け加えて微笑んだ。 勉強道具に荒れていた机は綺麗になり、ゴミもきちんと纏められていた。 ベッドの布団も外に干しているようだ。 ん……ベッド……だと……。 「まさかっ!」 「いかがわしい本なら全部燃やしたよ」 さながら天使が微笑むように、柔らかな満面の笑みを見せてくれた。 「晴彦さんがあんな本ばかり読んでいるなんて……」 「彼女いない男なら普通です!」 泣きたくなってきた。 恥ずかしさに顔が熱くなり、ついでに目頭も熱い。 「しかも、少女を部屋に閉じ込めるものばっかり」 「いやいやいやいや! そんなの入れてないから!」 全くもって入れていない。 話題を逸らすべく、俺は考える。 「あれ、ご飯食べた?」 「食材が無かったので」 申し訳ない気持ちで一杯になった。 俺はさっき買った食材を手に、キッチンへと向かった。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4781人が本棚に入れています
本棚に追加