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見上げた漆黒の空に、星が散りばめられている。
月明かりに負けない光を放ち、花畑を照らしていた。
上を向けば星の花畑。
下を向けば色彩豊かな花畑。
「綺麗……」
優美の言葉に俺は無言で頷いて、花畑の端へと進んだ。
続けて、後ろから優美の足音も聞こえる。
「あった」
白い花。
花畑からは外れて、雑草に混じっている。
「……これ……何の花?」
「ハルジオン」
紫苑の仲間で、春になればよく見かける花の一種だ。
雑草と混じることから、あまり花としては意識されていない。
「白いね」
「いいや」
俺は手を伸ばして一輪だけ摘んだ。
優美に手招きをして、摘んだハルジオンを月明かりに当たるように掲げた。
「ね? 白じゃないでしょ?」
「うん、……可愛いピンク色だね」
そう、ハルジオンは白い花に見えるが、うっすらと桃色に染まっているものもある。
そしてこの花畑の近くに咲くハルジオンは、ほとんどが桃色だ。
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