4781人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
「じゃあ今、俺と話しているのは誰?」
うまく優美を黙らせて、俺は続けた。
「その明るさも本当の優美だ。虚像な訳が無い。出会ってから日は短いけど、俺は優美を知っている。だから……逃げるな」
元来人を説得するのが苦手な俺には、気持ちをぶつけるしか無かった。
「でも……でも……」
「ハルジオンの花言葉を知ってる?」
何かを言おうとして詰まらせていた優美に、俺は春紫苑を目の前に差し出して問いかけた。
……花言葉が好きだった要に、いつの日か教えてもらったものだ。
優美は小首を傾げて、目の前のハルジオンを見つめた。
「花言葉は『君を忘れない』 例え優美が俺を忘れても、俺は優美を忘れない。絶対に」
我ながら言ってて恥ずかしい台詞だ。
それを聞いたせいか、優美の頬に大粒の涙が伝わっていく。
「うぇ……ひっぐ……でもぉ……私は……っ……」
本当は明るくて笑顔の似合う少女なんだ。
俺はそれを取り戻したい。
嗚咽を漏らしている優美を見据えて、俺は微笑んだ。
「じゃあ、一緒に死のう!」
「…………え……?」
最初のコメントを投稿しよう!