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優美は口を半開きにして呆然と立ち尽くしている。俺は手を差し出す。
「一緒に、死のう」
「ぇ……あっ……いやっ……」
優美は慌てて首を振る。
でも、否定はさせない。
「俺と一緒に……結婚して、子供を生んで、その成長を見届けて、お互いに手を取り合って――」
俺は差し出した手を、優美の前に置いた。
「幸せになってから、最後を共にしよう」
これは告白。
ただただ大学に通って桜並木を見るだけだった色の無い世界に、この数日間で彼女が色をつけてくれた。
透明じゃない。
俺にとっては色彩溢れる大切な人だ。
「ははっ……馬鹿みたい……。一緒に死のう、が告白なんて……」
「確かに……」
言った後で少々後悔した。
言葉選びが苦手な俺にとって、大分捻ったものではあったが……。
でも告白をした事に微塵も後悔はない。
「返事、きかせてくれる?」
マナー違反ではあるが、促してみた。
そして差し出した手が――
「……今の言葉、約束してね?」
――彼女に届いた。
月明かりに照らされ星が見守る中、俺は彼女と永遠の約束を交わした。
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