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「これだけでいいか」
買い物袋を両手に提げながら、俺は帰り道を歩いていた。
雲一つない青空に、照りつける太陽はまさしく夏だ。
「ん……いい匂いがするな」
中山と書かれた表札がついてる家の前にて立ち止まった。
この時間帯だ。
朝食でも作っているのだろう。
甘い匂いが漂っている。
フレンチトーストだろうか。
はたまたホットケーキか。
何にせよ俺の嗅覚を刺激しているのには違いない。
俺はインターホンを鳴らす。
ピンポーンと音が鳴り響き、数秒後にはガチャリと鍵の開ける音がした。
「おかえりなさい!」
満面の笑みで、目の前の少女が出迎えてくれる。
だから俺は冗談混じりに答えた――
「ただいま、優美」
それを聞いた時の少女の顔は忘れれないだろう。
驚きに満ちた表情で、優美がゆっくりと口を開くのを――
「白鳥……要さん……」
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