終幕‐透明な少女‐

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  「ついつい立ち読みしてたら……!」 俺は片手に買い物袋を提げて、帰り道を全力で走っていた。 ついつい立ち読みをしていたら、読み終えた頃にはもう昼近くになっていた事に気が付いたのだ。 家の前まで来て、俺はインターホンを鳴らした。 しかし出てこない。 ドアを開けると、男の靴と思われるものが一足あった。 「強盗……?」 背筋がゾクリとした。 俺は身近な武器を探して、傘を見つけた。 「ん、晴彦なにしてんだ」 するとリビングの方から要が出てきて、俺は安堵した。 同時に疑問もわく。 「こっちのセリフだよ。なんで要が居るんだ?」 「んー? 今日は家族が誰もいなくてさ。一人で食うのも寂しくてなぁ……」 要はわざとらしく溜め息を吐いた。 先ほどから微かに食べ物の良い臭いが漂っている。 朝食を抜いている上に要の料理は相当美味しいのだから、断る理由は全く無かった。 「んじゃあ久々に頼むよ」 「ああ、ってかもう出来てるんだが」 「早いな」 「お前が遅いんだよ」 お互いに笑いあってから、俺達はリビングへ向かった。 その途中に何か違和感を感じたが、気のせいだということにして俺は料理に手をつけた。
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