開幕‐それは運命のように‐

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  あれから数分は経っただろう。 泣いていた少女も徐々に落ち着きを取り戻していった。 「ごめんなさい……急に……」 「いや、むしろ礼を言いたいくらいだったけど。どうしたんだい?」 餅のような柔らかな肌が気持ち良かった。 その意味での“礼”ああ、俺は最低だ。 子供を慰めるように優しく頭を撫でて、そう問いかけた。 陽に当たっていた髪は暖かく、一本一本が絹のようだ。 「私、他の人には見えないんです……」 ああ、この少女は電波系でしたか。 「じゃあ俺はこれで」 「待ってくださいよぉっ!」 ベンチから立ち上がった俺の腕に、少女は涙目で絡み付いてきた。 他人に見えない。 どこのミステリー番組だ。 「本当なんです! 信じてください!」 涙目で必死に問いかける少女。 その気迫に負けてしまい、俺は「わかったわかった」と言ってしまった。 「じゃあ、ちょっと試すか」 その言葉に少女は首を傾げて、俺をジッと見つめた。 俺は立ち上がり、先ほどから『ごっこ遊び』をしていた男児に問いかける。 「ねぇ僕、そこのお姉ちゃんが見える?」 あまりに率直すぎただろうか。 変なオジサンに見られそうで怖いが、純粋な子なら大丈夫だろう。 「お姉ちゃん……? 誰もいないよぉ?」 ――え?
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