幕間‐見えない‐

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  その後、下唇を強く噛み締めて肩を震わす少女の手を引いて、自宅へと向かった。 他意は全くない。 断じて監禁などといった行為ではない、うん。 それに純粋無垢な子供が「誰もいない」と答えたのだから、透明というのは事実なのだろう。 「さて、事情を聞いていいかな?」 自室のソファーに少女を座らせて、なるべく優しく問い掛ける。 オレンジジュースの入ったコップを渡すと、少女は両手で持って勢いよく飲み干した。 「ごめんなさい……私もわからないんです」 俺は髪を荒々しく掻いて、冷静に考える。 透明、ただでさえファンタジーだ。 透明になるというのには憧れたが、まさかそれが現実に存在するとは。 そしてなぜ少女が透明になったのか、全くわからない。 「そうだな……ひとまず自己紹介をするよ。俺は中山晴彦(ナカヤマハルヒコ)、よろしく」 「えっと、私は木下優美(キノシタユミ)です」 自己紹介をしてから、俺は微笑む。 すると少女も軽く自己紹介をし、春の暖かさを思わせる笑みを浮かべてから、ペコリと頭を下げた。
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