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「それで、透明になったのはいつ頃からなの?」
「えっとですね……」
少女は下唇に人差し指を置いて、いつ頃だったのかを思い出しているようだ。
それほど長い日にち透明だったのだろうか、孤独だったのだろうか。
◇
少女――優美は普通の学生だった。
貧しくも裕福でもない家庭に、父と母の三人家族。
一つ言えば家族の仲は良く、毎日が温かさに包まれていた。
学校に行けば、多くの友達に「おはよう!」と挨拶を交わすことができた。
明るく温厚な性格からか、優美はクラスで人気者だった。
しかし、その世界が崩れ落ちた。
毎日訪れる朝。
温かな太陽の光が窓から射し込む。
優美は起きてから、リビングへ向かった。
そしてリビングに座る父親と母親に「おはよう」と挨拶をする。
しかし、反応が無い。
もう一度言ってみる。
反応が無い。
不思議に思った優美は、自分が何か悪いことをしたのかと試行錯誤するが、特に無い。
全く反応しない両親に怒りを感じた。
諦めた優美は顔を洗おうと洗面所に向かった。
鏡を見る。
自分が――居ない。
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