おわりのはじまり

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  ……こんな話、誰も信じちゃくれないだろう。あたしだってこんな話聞かされても……信じないだろうし。     でもいくら受け入れがたくても、これを自然現象とかマジックみたいなモンだと思ってるしかない。   だってどうにもならない。   どうにも、出来ない。       何故って。       「ヒビ」は、あたし以外に見えないみたいだから。         あたしだってあのヒビについて何もしなかった訳じゃない。   初めてヒビを見て……時間が動き出した後、一緒にいた百合や沓掛に「今の覚えてる?」と訊いた。     勿論答えは                     「何の事?」       だったけど。       そりゃそうだよ。   あれだけ揺さ振って、叩いて、叫んで、泣いて、縋[すが]ったのに……覚えてるなんて言ったら腹が立つ。   ……動けないだけで意識があるっていうなら話は別だけど……百合も沓掛も、いつも通り歩いていたのに、急にあたしが変な事を言い出したと言っただけだった。     出来ればもう二度とあんな事起きて欲しくなかったけど、ヒビは何度もあたしの前に現れた。   だから、色々試した。       携帯。どこにも繋がらない。 コンビニ。自動ドアすら開かない。 噴水。浮かんだままの水の粒も溜まった水もまるで石みたいになっている。 人間。髪の毛までカチカチに固まってて、マネキンみたい。       ……打つ手は、無い。     感覚が麻痺してしまったのか……それからのあたしは、ずっと座って時間が流れ出すのを待つようになった。     時に本を読みながら。 たまに宿題をしながら。       そして、毎回。         『早くここから出して……出れたら、二度とこんな事にならないで』     そう、祈った。  
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