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「……ぁ、れ?」
いつものようにぼんやりしていたら――ヒビの真ん中辺りから、指が見えた。
……え、指?
いやいやいや、気持ち悪い。見たくない見たくない。
つーかこの「ヒビ」から人間が出て来るもんなの?
だとしたら何者なの?
……あたしと同じでヒビが見えるんだろうか。
そういえば、ヒビに触った事はなかった気がする。だって得体の知れないモノに触るのは怖いし。
……最初は怖くて、ずっと泣いてたし、ね。
あたしがぐるぐる迷走思考をしている間にも、指は本数が増え、手が見えた。
出ようと、してる?
なら。
「えい」
「うぁッ!?」
先手必勝、かな。
まぁ何だか待つのもじれったいし、引っ張ってみたら案外あっさりと手から先……「ヒビ」から来た人間はこちら側に落ちて来た。
「――……黒崎?」
「……有坂?」
意外だった。
「ヒビ」の先から出て来たのは、あたしの友達。
いや、親友。
「あんた、何でこんなとこに……」
「くろさ……いや、凜々、お前これが見えるのか?」
「別に見えたくもないけど見える。それよりどうしてコレから出て来たの?」
名乗り忘れてたけど、あたしの名前は黒崎 凜々[クロサキ リリ]。
檜学院高等学校2年A組、普通の女子高生。
今、親友に会うまでは。
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