おわりのはじまり

5/7
前へ
/436ページ
次へ
  「……ぁ、れ?」       いつものようにぼんやりしていたら――ヒビの真ん中辺りから、指が見えた。   ……え、指?     いやいやいや、気持ち悪い。見たくない見たくない。 つーかこの「ヒビ」から人間が出て来るもんなの? だとしたら何者なの?     ……あたしと同じでヒビが見えるんだろうか。   そういえば、ヒビに触った事はなかった気がする。だって得体の知れないモノに触るのは怖いし。 ……最初は怖くて、ずっと泣いてたし、ね。     あたしがぐるぐる迷走思考をしている間にも、指は本数が増え、手が見えた。 出ようと、してる?     なら。                   「えい」   「うぁッ!?」     先手必勝、かな。   まぁ何だか待つのもじれったいし、引っ張ってみたら案外あっさりと手から先……「ヒビ」から来た人間はこちら側に落ちて来た。     「――……黒崎?」   「……有坂?」     意外だった。 「ヒビ」の先から出て来たのは、あたしの友達。     いや、親友。     「あんた、何でこんなとこに……」   「くろさ……いや、凜々、お前これが見えるのか?」   「別に見えたくもないけど見える。それよりどうしてコレから出て来たの?」       名乗り忘れてたけど、あたしの名前は黒崎 凜々[クロサキ リリ]。 檜学院高等学校2年A組、普通の女子高生。             今、親友に会うまでは。  
/436ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1489人が本棚に入れています
本棚に追加