おわりのはじまり

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  「あー……説明するのが難しいんだけど……」   「そこを何とか頑張ってよ。最近いきなり時間が止まるから困ってるんだけど」     ぴた、と有坂……もとい、庵の手が止まる。   そうそう、こいつの名前は有坂 庵[アリサカ イオリ]。黒髪に少しだけ赤い色が入ってる。身長は180ちょいくらい。顔も悪くないと思う。 あたしとは幼なじみの腐れ縁。高校は違うけど、何かとよく遊ぶ仲だ。     「……凜々、時間を止められるのか?」   「止められる訳ないでしょ、魔法使いじゃないんだから」   「……お前と話してると訳わかんなくなるよ」   「今はあたしの方が訳わかんないんだけど」     苦笑して、庵はズボンの埃[ほこり]を払う。進学校、東高の制服。 ……あたしは頭は悪くもないけどよくもない。庵とつるむのは楽しいけど、同じ学校に行けないのは少し寂しいような、悔しいような気がしていた。     ……お互いを苗字で呼ぶようになったの、いつからだっけ……     「凜々、よく聞け。このまま時間凍結してると奴らに嗅ぎ付けられる。一度この状態を解くから、今日の夜俺んち来て」   「奴らって誰?このヒビ作ってる奴がいるの?」     それには答えず、庵は辺りを見回し、あたしの手に何かを握らせた。     「今話してる時間がない。これは持っとけ」   「待ってよ、あたしには何が何だか」   「いいな、絶対だぞ」           パキン!     「凜々ぃ~、どしたの~?」   「……百合……」     動いてる。時間が。       ……動いてないのは、あたしの頭。  
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