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……落ち着いて、今の状況を考えよう。
ここは駅前の噴水広場。
目の前には百合。
うん、問題ない。
ヒビもないし、周りの人も動いてる。
さっきと違う事。
庵がいない事。
あたしの手の中に、鈍く光る指輪がある事……
「凜々?」
「ぁ、ごめん……行こ、百合」
百合は不思議そうな顔をしていたけど、あまり気にしない性格だからか、すぐに笑顔になる。
同じように笑いながら、あたしは指輪を制服のポケットへ滑り込ませた。
携帯のアドレス帳には勿論、庵が登録されている。
けど……
『夜俺んちに来い』
庵は、意味のない嘘をついたり、ごまかしをする奴じゃない。
あの言葉には、何か意味があると思ったから……あたしは開きかけた携帯を鞄に放り込んだ。
「凜々~♪」
「はいはーい」
今は百合との買い物を楽しむ方が絶対楽しい。
削れたローファーが、かつんと鳴った。
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