第五巻

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少しの沈黙の後、耐えきれなくなった紫苑はふっと頭を上げて、人差し指をピンと上に向けた。 「実は、この呪符を暁音さんにあげたのにはある理由があるんです」 「紫苑さん、ちょっと立ち直るの早すぎです」 「すいません、楽天家なもんで。 では、本題に」 紫苑はもういちど椅子に深く腰掛けた。 「最近、この屋敷の人間が妖怪に連れ去られるという事件が多発しています。 恐らく、妖怪の親玉が僕達妖怪払いの本拠地を見つけだそうとしているんでしょう。 そして今5人の仲間の一人の《荻原千尋》。ほら、さっきの昔話に出てきた僕に話し掛けてくれた彼女なんですが、まだ捕われたまま帰ってきてないんです・・・・」 無事ならいいんですが・・・・ と、紫苑はギュッと拳を握り締めた。
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