恋愛定義

4/6
前へ
/93ページ
次へ
自転車を引きながら家までの坂道を歩いた。 急な上り坂で、自転車を漕ぐと腿の筋肉が強張るのでいつも歩く。 等間隔で立つ街灯の光が虚しさを強調させる。 スボンのポケットから携帯を取り出し、ボタンを2、3個押すと、耳に当て、コール音を聞いた。 『もしもし?』 『ヤマァ!』 『稲?酔ってる?』 相変わらず真面目な奴だ。 お洒落だし、一見それなりに遊んでそうに見えるけど、骨の髄から真面目で構成されてるような奴だ。 悪ガキがそのままでっかくなったような俺とは、相性悪そうな感じがするけど、実際は波長が合う、と思う。 『酔ってない。』 『じゃぁ、フラれた?』 『当てるな。』 『またかぁ。同じ理由?』 『同じ理由。』 『稲はモテんのになぁ。皆“気軽さ”を求めるね。』 『俺さ、そんな軽そう?』 『…』 『軽そうか…』 『いや、稲がどうとかじゃなくてさ、相手が違うだけなんだよ。その相手に出逢うまでの良い経験と思えば?』 『ヤマは出逢ってるもんな…。俺も早く出逢いてぇ!』 それから家に着く数分話して電話を切った。 相手なんているのか?
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5609人が本棚に入れています
本棚に追加