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魔王は想像を絶する親バカらしい。
生活費をわざわざ自分で渡しに来た。
生活費は建て前で、チーたんに会いに来たのがバレバレだという何とも情けない魔王だが、その姿はやはり人間とは異形の姿だ。頭だけ。
蒼黒く厳ついその顔に、赤く鈍い輝きを発する両眼、鋭く伸びた耳、天を突き刺すようにギラリと光沢を見せつける二本曲角。
まさに魔王と呼ばれるに相応しい顔。
顔である。"魔王"の顔である。
下半身は、私伊藤が毎日着用しておりますサラリーマンの味方、「スーツ」様でございました。
しっかりとスーツを着こなす魔王はまるでどこにでもいる会社員のようであった。顔以外は。
「君が、いや貴殿が我が娘を拾ってくれたのですね。敬意をもって感謝させてもらう」
感謝するなら顔をこっちに向けろ。言葉遣いも色々おかしい。
体だけこっちを向いていて顔は娘の方。
娘の事が気になるのだろうが、魔王が真顔で正座しているのは見ていてその姿に腹筋が崩壊しそうになるのだが顔が真顔だけに笑えない。
「いえいえ。当然のことをしたまでです。子猫から人間になる時はびっくりしましたがね」
「はっはっは。いや、我が娘は変身魔法がお得意でしてね。本物そっくりでしたでしょう」
うぅむ。親バカだけあって娘をべた褒めか。とりあえず顔をこっちに向けろ。
いや、見るな。笑ってしまう。
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