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「あ、どうもすいません。申し遅れました。私、魔王の娘の父の魔王と申します」
知ってるよ。
そして、娘の自慢をした後に今更自己紹介か。
しかも自己紹介できてません。
名前言ってください。
娘と同じでクソ長ったらしいんだろうが。
断片だけでもいいから、サタンだけでもいいから言ってください。
「はぁ。あ、私、伊藤天子と言います」
「ほほぅ天子! 何? あまのこ、天の子?! おのれぃ、天界の者が何故ココに?! ゼウスの差し金か?!」
ゼウスって誰よ。
俺がそんな事を思っている間に魔王のスーツはブチッとはじけ飛んで俺の部屋に散らばった。
何故だか怒れる魔王ココにあり。
いかんな。本気で凄い威圧感だ。
だが、ネクタイだけが残っているのはネタだろうか。
俺は今にも吹き出しそうだ。
「パパ。落ち着くのだ。伊藤は伊藤だ。それ以外の何者でもない。伊藤は……そう。どこにでもいる伊藤なのだ」
「む、むぅ……しかしチーたん! こやつは今天使と」
いやいや待て。チーたん。
確かに俺は伊藤だが、どこにでもいる伊藤って……全国に何万人伊藤がいると思うんだ。失礼だろう。謝るんだ。あとでいいから全国の伊藤さんに謝れ。
しがないサラリーマンの俺と同類にされた伊藤さんに謝れ。
あと俺にもだ。
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