第二話 申し遅れました。私、魔王の娘の父の魔王、と申します。

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「あ、どうもすいません。申し遅れました。私、魔王の娘の父の魔王と申します」   知ってるよ。   そして、娘の自慢をした後に今更自己紹介か。   しかも自己紹介できてません。   名前言ってください。   娘と同じでクソ長ったらしいんだろうが。   断片だけでもいいから、サタンだけでもいいから言ってください。     「はぁ。あ、私、伊藤天子と言います」   「ほほぅ天子! 何? あまのこ、天の子?! おのれぃ、天界の者が何故ココに?! ゼウスの差し金か?!」   ゼウスって誰よ。   俺がそんな事を思っている間に魔王のスーツはブチッとはじけ飛んで俺の部屋に散らばった。   何故だか怒れる魔王ココにあり。   いかんな。本気で凄い威圧感だ。   だが、ネクタイだけが残っているのはネタだろうか。   俺は今にも吹き出しそうだ。   「パパ。落ち着くのだ。伊藤は伊藤だ。それ以外の何者でもない。伊藤は……そう。どこにでもいる伊藤なのだ」   「む、むぅ……しかしチーたん! こやつは今天使と」   いやいや待て。チーたん。   確かに俺は伊藤だが、どこにでもいる伊藤って……全国に何万人伊藤がいると思うんだ。失礼だろう。謝るんだ。あとでいいから全国の伊藤さんに謝れ。   しがないサラリーマンの俺と同類にされた伊藤さんに謝れ。   あと俺にもだ。
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