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「と言うわけだ。わかったか伊藤よ」
「わからない。というより理解し難い」
俺はしがない会社員伊藤。名前は天子。あまのこじゃない。てんしだ。
今日、今さっき道端で猫を拾った。
そいつはまだ生まれたての子猫のようで、酷く弱っていて、今直ぐに死んでしまうんじゃないかと思った俺は半分ぐらいの慈悲心と半分ぐらいの好奇心でそいつを拾うことにした。
アパートに帰った俺はそいつにミルクを与えてみた。もちろん牛乳じゃない。わざわざ途中で店に立ち寄って専用の粉ミルクを買ったのだ。
そこまでは良かった。
ミルクを飲ませた途端、みるみるうちに体が大きくなって人間の小娘になってしまったのだ。
金髪ツインテール。見た目はロリータ。
「おい。聞いているのか伊藤」
「あぁ、聞いちゃいない」
「人の話をまともに聞けない人間に拾われるとはな……絶望以外の言葉が見つからないな」
「膨れんなって。アイス食べるか?」
「アイス? ふん。そんなもので僕を釣って何をしようっていうんだ。いかがわしい事でも考えているんじゃないのか? 嘆かわしい。全く嘆かわしい」
「何だ。いらないのか。じゃあ食べるかな」
「駄目ー。僕も食べるー」
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